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中編
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霊夢が倒れて暫く過ぎた後…、
『博麗神社の代理巫女』とデカデカと書かれた腕章を腕に巻き、
霊夢と同じ巫女服に身を包んだ早苗が居た。
本日は早苗が当番の日である。
一体どこから情報が流れたのか分からないが、
霊夢が倒れてから、日によって変わる代理巫女を拝もうとする
参拝客がちらほらやってくるようになった。
余談ではあるが、早苗が当番の時が一番多いらしい。
というのも…、
「やっぱりちょっとこの服はキツいわ、主に胸が…。」
断わっておくと、霊夢の胸は決して小さい訳ではなく、
普通に常人クラスのサイズはあるのである。
だが、早苗の胸のサイズが他人よりも大きめな為、つまり
どう見ても『巨乳』と形容するのがふさわしいくらいの大きさであるので
霊夢のサイズに合ったこの巫女服は早苗にとっては辛いのである。
そしてこの話が幻想郷中の早苗信者軍団に広まらない訳もなく…、
人妖を問わず博麗神社には少なくはない程度に
参拝客(=早苗信者 )が訪れるようになっているのである。
博麗神社に積もっていた雪は、以前、魔理沙が当番の時に
間欠泉の熱湯をかけて溶かしたらしいので思いの他雪の量は少なく、
境内の掃き掃除もやりやすい。
「そういえば霊夢さん、この前あの間欠泉使って温泉作るとか何とか言ってた様な…、
まぁ完成したら入れて貰おうかな?」
間欠泉のお陰でお湯が調達しやすくなった為、
霊夢が休んでいる部屋の暖気の維持は楽な方だと思う。
博麗神社の境内の掃き掃除をササッと終わらせ、
その後に霊夢の氷枕を取り換えて体温計で体温を測り、加湿器に水を補充。
それらを一通り済ませてのんびりと休憩していた時、
「おーいさなえー、大変だー!!」
と彼女の元に飛び込んできたのは頭に角のある小さな女の娘、伊吹萃香。
何だかんだで彼女も霊夢と同じ巫女服を着て、
腕に『博麗神社の代理巫女』という腕章を付けている。
というか、今日は彼女の当番の日ではないのに
なぜ博麗神社の巫女服を着ているのだろうか?
「どうかしたんですか?」
「人里に何か妖獣の群れが入り込んだみたいでさ、大変な騒ぎになってるんだ!」
「えぇ!?」
また何てタイミングで異変が起きるんですか…。
と心の中で頭を抱える早苗。
「本来こういう事態になったら霊夢が行かなきゃいけないんだけど、
あの様子じゃ無理っぽいし、ていうか今回ばかりは休ませてあげたいし…。
魔理沙やアリスには既に伝えたし、慧音の奴も頑張ってる。
私もこれから里に行くけど、
いかんせんこちら側の頭数が少ないから協力してくれないか?」
「勿論です、こういう事態の為に私たちが代理で巫女を引き受けてる訳ですから。」
「よしっ、それじゃ私は先に行くよ!」
そう言うと萃香は来た時の勢いそのままに神社を飛び出していった。
早苗もすぐにでも飛び出したかったが流石にこの服のまま弾幕をやるのは少々辛い…。
慧音さんや魔理沙さん達がすぐにやられる様な人では無いと分かっても居るので
少し悪いとは思ったが着替えてから出かけることにした。
そして博麗神社の巫女服からいつもの守矢神社の巫女服へ着替え終わった時、
先ほどまで来ていた博麗神社の方の巫女服から
一枚のカードが早苗の足元に落ちて来た。
手に取ってみると、それは霊夢が使うスペルカードらしく
霊符「夢想封印 -集-」と記載されていた。
他人のスペルカードを使う事が出来ない事くらい早苗も知っているが、
「…お守り代わりにはなりますよね。」
と思い、何の気なしに自分の巫女服の袖の中に入れる。
守矢神社から持ってきているカードは
「神の風」が一枚、秘術「九字刺し」が三枚、
奇跡「ミラクルフルーツ」が二枚、奇跡「海が割れた日」が三枚。
緊急回避用の霊撃カードが3枚、各種スキルカード7枚、
そして霊夢の霊符「夢想封印」が一枚といった具合。
後は霊夢から借り受けたお札や陰陽玉、退魔針が幾つか。
これだけあれば何とかはなるかな…?
そして最後に『博麗神社の代理巫女』と書かれた腕章を右腕にはめ、
早苗も神社を飛び出していった。
その頃、人間の里…。
普段は賑やかで騒がしい、人間の暮らす平和な集落なのだが
今は逃げ惑う人達の悲鳴などで溢れていた。
「うわ、酷いわねこれは…。」
里の荒れようを上空から目の当たりにした早苗は思わずそう漏らす。
まるでコレは、外の世界に居た時に見た、
自爆テロ発生直後の町の様子などに近いものがあるわね…。
早苗はそう思いつつも、里を荒らしまわっているらしい
妖怪の類の姿を、目を凝らして探す。
その時、
「慌てないで下さい、里に入り込んだ妖の数はそれほど多くはありません、
慧音さんたちが相手をしてくれているので、みなさん落ち着いて避難して下さい。」
そんな中で必死に人を誘導しようとしている稗田 阿求の姿が目に入った。
「阿求さん、今の状況はどんな感じなんですか?」
「早苗さん、来てくれたんですね。
…今は慧音さんやたまたま一緒に居た妹紅さん、
それに魔法使い二人と鬼の計5人に、
里に散らばっている妖獣の相手をして貰っています。
ですが…。」
「どうかしたんですか?」
阿求の物言いが妙に気になったので、何か問題があるのかと思い、早苗は尋ねてみた。
「実は現在、女の子が一人、行方が分からなくなっているんですよ。
魔理沙さん達に捜索を頼む訳にも行きませんし、
どうしようかと思ってたんですけど…。」
「い、一大事じゃないですか!!
…分かりました、私が探してきます。
その子の特徴を教えてください。」
「慧音さんの寺子屋に通っている女の子の内の一人、
という事は分かっているんですけど、流石に人相までは…。」
「慧音さんの寺子屋に通っている女の子でいいんですね?
なら大丈夫です、これでも一応あそこの臨時講師も務めてるんで、任せて下さい。」
早苗はそう告げると、返事も聞かずに飛び出して行った。
霊夢さんほどのカンの良さは発揮できそうにもないけれど、
私の力を最大限に利用すれば…。
里の中を、自分のカンと能力を信じて女の子を探して歩き回る早苗。
そして…。
早苗はやっとの事で、建物の陰に隠れた小さな女の子の姿を見つけた。
「霊奈ちゃん、どうしたのこんな所にいて!」
「さ、早苗お姉ちゃ~~ん!!」
その子は早苗の姿を見つけるなり、涙を流しながら駆け寄ってきた。
どうやら、ちょっと擦り傷がある以外に目立った怪我も無さそうで何よりだ。
「ここは危ないわ、お姉さんと一緒に逃げよう、私にしっかり掴まっててね。」
早苗がそう言うと、女の子はうんと頷き、しっかりと彼女の巫女服を掴む。
そして早苗の方も女の子を両手で抱き抱え、空へ飛び立とうとした時…。
「お姉ちゃん、危ない、伏せてッ!!」
その女の子がそう言うのと同時に、
殆ど反射的に女の子を抱きかかえたまま地面に伏せる早苗。
その直後、先ほどまで早苗の頭があった場所を
『黒い何か』が通り過ぎて行くのがはっきりと分かった。
『ソレ』は早苗達からおよそ20mほど離れた地面に着地し、こちらを睨みつけている。
素早く地面から体を起こした早苗が、『ソレ』と対峙する。
外見は小さい頃に図鑑で見たニホンオオカミに近いだろうか?
だが、その大きさは図鑑に載っていた大きさのそれを遙かに上回っていた。
ぱっと見た限りで、全長2mはゆうに超えていると思われる。
そして何より、目の前の『ソレ』は早苗でも感じ取れるほどの
かなりなレベルの『妖気』の様なものを放っていた。
「あいつが、さっきからずっと私をおいかけてきてるの。どうしてなの?」
目の前に居る『ソレ』と対峙する早苗の陰に隠れるようにしている
女の子が後ろからそう言う。
「じゃあ霊奈ちゃんは、アレからずっと一人で逃げてたの?」
早苗がそう問いかけると、うんと頷く。
どうして、こんな小さな子をこんな妖怪が付け狙っているのだろうか…?
その点が気になるけれど、
とにかく今はこの子を守りつつアイツを撃退するしかない…!
不安げな表情で見上げてくる女の子に一言、
「大丈夫、お姉ちゃんが絶対守ってあげるから、傍を離れちゃだめよ。」
と告げる。そして…、
「そこの貴方、女の子へのアプローチは
もっと優しくしないとダメって貴方達の世界でも習わなかったかしら?」
早苗は目の前の『ソレ』にそう言うと、右手に持った守矢神社用の大幣を構える。
精神を集中し、頭の中に星を思い浮かべる。
すると、早苗の握った大幣から星形の魔法陣の様なものが浮かび上がり、
其処から無数の弾幕が形成されていく。
十分に弾幕を作った所で、
「行きなさいっ!」
そう言うと同時に早苗は彼女の十八番でもある、
星形に並んだ弾幕を形成し、『ソレ』へと飛ばす。
だが相手も一枚岩では無い様だ。
早苗が出した弾幕を掻い潜り、こちらへ向かってくる。
反撃らしい反撃をしない事から、
どうやら目の前の『ソレ』は弾幕は殆んど出せない妖怪らしい。
なら無理に近接戦闘は挑まず、距離を保ちつつ射撃戦に持ち込めば…ッ!
だが、早苗の出す弾幕をことごとく避け、
『ソレ』は早苗達に飛びかかれるギリギリまで迫って来ていた。
そして、早苗達を押し倒さんとせんばかりの勢いで飛びかかってくる…。
だが早苗とてこの一年間、ただ何もせず過ごしてきた訳ではない、
相手がこちらに到着するより早く、彼女は巫女服の袖の中から一枚のカードを取り出し、
「スペルカード、奇跡『海が割れた日』ッ!!」
スペルカード発動宣言。
その直後、早苗たちの目の前に巨大な水の壁が形成、
その、地面から噴き出た水によって形成された壁によって
眼前まで迫っていた『ソレ』は吹き飛ばされて行った。
「よし、今のうちに…。」
そして早苗が素早く女の子を抱きかかえて上空へ飛び上がっていった…。
後篇に続く