時月の手足を奪って以来、和泉は一度も暴力を振るっていない。
暴言のひとつさえ吐きはしなかった。
それどころか、献身的と言っていいほど、まめまめしく時月の世話を焼いている。
毎日、傷口の癒しを丁寧に行い、身体を拭き、長い髪を梳いて、化粧を施していた。飲食物も親鳥のように口に入れてやり、自らの精気を分け与えてもいる。
時月はいつも裸で、切断面を覆う布のほかは、下着ひとつ身に着けて・・・

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小さな身体できびきびと、あちらこちらへ出向き、朝から晩までよく働く。
彼女の祖父と、そして死んだ父親にそっくりだ。
蘭香があちこち動き回る姿を見るたび、典雅はそう思う。働き者のねずみのようだ。くりくりとした大きな瞳など、まさしくそういった印象である。
「蘭子」
忙しげな後ろ姿に、典雅が呼び掛けると、いつも素早く振り返る。
「はい、典雅様」
「いや別に。用は無いけど」
「あら…・・・

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己の師が一番美しい、と思っている鬼は多いという。
東雲もそうだった。克己は山でもっとも美しい鬼だ。それは間違いない。もっとも端麗で、もっとも優美で、もっとも卑猥な鬼だった。声は柔らかで、物腰は優しく、ねだり声は粘って甘い。
結局、色仕掛けで絆されたのだ。あの色目、あの甘ったるい声でねだられて、断れる者などないだろう。
だから東雲は幾年も、空気の悪い街に住み、食らいたいものも食らえず、・・・

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