夜空はほの白く雲に覆われ、月も星も見えなかった。時折不気味な音を立てて風が通りすぎてゆく。真冬の大気はつめたく澄んで、しんと静まりかえっていた。
崖の下から突風が吹き、凛々子(りりこ)の髪が舞った。びゅう、と風の唸る音が耳もとを掠める。凛々子は立ち止まって振り返り、来た道のその向こうを遠く、眺め遣った。
家に置いてきたふたりの子どもたちは、まだ眠っているだろうか。
起きて母がいないこ・・・

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雨期。降り続く雨に地面はゆるみ、道路がきれいに整備されていない、第七都の大通を歩けば、靴は泥にまみれた。
その泥の中、靴をなくした左足を土の色に染めて、七都は泣きながら歩いていた。長い服の裾も泥で汚れ、足首にはめられた青い輪も、濡れた土色に変わっていた。
「……優花、どこ」
しゃくり上げながら七都が呼ぶ。顔を上げて、雨に煙る街を何処まで見渡しても、一緒に来たはずの姉の姿が見えない。
・・・

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つめたい朝の空気の中、七都はひとりきり目を覚ました。
いつもと同じ朝。ただ、目覚める場所が違っていて、そして優花がいない。
二段ベッドの下段で眠っていた聖羅は先に起きたらしく、部屋にはいなかった。目をこすりながら七都は身を起こし、裸足でベッドから降りると、窓にはめられていた雨戸を外した。
「……わ」
朝の陽が洪水のようにあふれ、七都は思わず一瞬目をつぶった。まだ濡れたままの葉が瑞々・・・

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