「あー。」
畑中純一は昨晩の何次会だかで流れたバーの扉を揺すって、絶望的な悲鳴を上げた。
八割がた完成した論文草稿を資料ごとPCごと忘れたことを思い出してゼミの始まる前に取りに来たのだが、案の定というべきか、店は開いていなかった。
ゼミの論文は卒業には関係ないが、せっかく準備したそれなりに自信の論文をこんな形で失った自分に腹が立つやら情けないやら。
もう酒はやめよう、
と、
・・・

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大学生にもなって、助けてもらった相手とまともに挨拶も交わさなかった結果、相手の名前も知らないことを少し恥じて、改めて問題の雑居ビルに足を向けたのは、週が明けて月曜日。
なんの踏ん切りがつかなかったというわけでなく、単に少し真面目に学生をやって、少し真面目に友人付き合いをすれば三日や四日はあっという間に過ぎる。
午前のコマが捌けたところで午後のコマが無いことがわかり、単に帰るのも芸がない。・・・

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日曜日。
事務所の鍵を預かりっぱなしだったので、早めに返そうと向かうと、事務所は開いていた。どうやらほとんど無休らしい。
仕事は嫌いと言っていた割には、事務所には詰めているのか。と、純一が思いながら扉をくぐると焦げた甘い匂い。
焚き火の後のような匂いと混じってコーヒーの香り。
「おはようございます」
デスクで居眠りをしている夜月に純一があいさつをすると、探偵はうめき声で返事に代・・・

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